特集 神経学における最近の研究
<臨床>
正常圧水頭症(NPH)
森安 信雄
1
1日本大学医学部脳神経外科
pp.899-900
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904979
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正常圧水頭症(以下NPHと記す)の概念は,1965年ADAMs and HAKIMによってすでに確立されている。すなわち,この症候群は,成人において脳室が拡大しているにもかかわらず髄液圧は正常範囲内にあり,神経症候としては,健忘,自発性低下,失算などの精神症状を主とし,さらに徐行,ジグザグ歩行などの歩行障害が出現し,腱反射ことに下肢の腱反射が亢進し,症例によっては尿失禁を認めるもので,手術的に脳室短絡術を行なうと,これらの症候が著しく改善されるのを特徴とする。
NPHと診断するためには,上記症候がすべて備わっていることが必要であるが,さらに各種補助診断法を応用すること立よって一層正確を期しうる。これら補助診断所見については,従来数多くの報告がみられるが,その主眼とするところは,これらの所見が,治療としてのshuntingの適応を決定するうえに重要な情報を提供してくれるからである。すなわち,気脳写,脳血管写,RISAcisternogram,corpus callosal angleの所見が手術効果を予測する重要なfactorとして呈示された。しかし,これらの所見はNPHを静止の形態から眺めているのであって,NPHが進行する病態であることを思えば,その進行途上における動態を把握することこそ,手術効果を予知するうえでも一層重要であると考えられる。
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