特集 神経学における最近の研究
<臨床>
植物状態患者
鈴木 二郎
1
,
児玉 南海雄
1
,
坂本 哲也
1
,
辺 龍秀
1
1東北大学脳研脳神経外科
pp.901-903
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904980
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医師は懸命な治療によって,多くの患者を社会復帰させる努力をしているものの,しばしば意識を回復し得ない程に脳が不可逆的変化を示す患者に遭遇する。以前はそのような患者はまもなく死亡していたが,最近の医療の充実に伴い,同じ姿勢でなんの意志をも表わすことなく,また理解もできないまま長期間生存する,いわゆる植物状態患者が漸増してきている。患者の悲惨さは言うまでもないが,それ以上に,家族の精神的,肉体的,経済的負担は大きく,その生活環境に与える影響は大変なものである。一方,医師はヒポクラテス以来生命を延長することを使命として教育され,現代の医学の力ではもはや,意識を取り戻すことが不可能であることを知りながらも,その生命を長らえるように努力している。しかし,それが長期間となると,家族の生活環境はますます悪化の一途をたどるというジレンマが生じ,われわれ医師はいかに対処すべきかという問題も生じてくる。要するに,植物状態患者は医療の進歩に伴って提起されてきた大きな新しい社会問題であり,われわれ医師のみならず,社会全体の人々が直面しなければならない避け得ざる問題である。
交通外傷によって植物状態患者が急増していた1972年秋の日本脳神経外科学会で,われわれはこの問題は新しい社会問題であるということを提唱し2),その後,近藤駿四郎先生を中心に学会有志14名が集まり,患者および患者家族の救済策を世に問うことになった。
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