特集 神経学における最近の研究
<生化学>
ミエリンの酵素
栗原 正
1
1新潟大学脳研究所神経薬理学部門
pp.719-721
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904907
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1960年代にはミエリンはそれ自身代謝的に安定であるばかりでなく酵素活性も有さないという説が一般に受け入れられていた1)。しかしながらミエリンの個々の構成物質はそれぞれ異なった速度で代謝回転していることがわかってきたし,ある種の酵素はミエリンに結合していることを示す証拠が得られている。中枢神経ミエリンに比較的特異的に結合していると思われる酵素が現在までに少なくとも二つ知られている。一つはわれわれが最初に報告した2′:3′-環状ヌクレオチド3′-フォスフォヒドロラーゼ11〜15)であり,もう一つはコレステロールエステル水解酵素の一種で至適pH 7.2の酵素6〜8)である。このほかにLeu-Gly-Glyを基質にしたときのアミノペプチダーゼがミエリンの内在性酵素として報告されている5)。また精製ミエリンにはミエリン塩基性タンパクのリン酸化および脱リン酸化を触媒する酵素3,18,19)やセレブロシド合成の最終段階を触媒するUDP-ガラクトース:セラミドガラクトース転移酵素4)が含まれている。前者はミエリンに特異的な酵素であるかどうか不明であり後者は部分的にミエリンに結合しているものである。
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