Japanese
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I.はじめに
筆者に課せられたこの標題は決して新しい問題ではない。例のく漢字・仮名問題〉は,すでに1901年に三浦(謹)により初めて指摘されて以来17),近年に至るまで繰り返し論じられて来た問題であって,いまさらの観がなくもない。しかし,ここに従来の知見や見解に加えてわれわれの知見を紹介し,この問題の意義とともに今後に残された問題点などについて記すことにしたい。
いうまでもなく,失語・失行・失認のような高次の神経機能の障害は,後天的に習得された機能の障害であって,中枢性麻痺や感覚障害のような生得的な機能の障害とは水準を異にしている。なかでも失語は人類のみの持つ発達した言語機能の障害として,顕著に言語的文化的背景の差が問題となり得る。換言すれば,失語症例の本質的障害は共通していても,相異なった国語の失語症状の様態を比較することにより,一方の国語では明らかにし難い所見が,他方の国語では顕著に露呈されることがある。日本語は世界の先進諸国の言語のうちでは,比較的独自の言語であり,上記の観点よりすると,失語症状の上に若干の特色が見出されている。その特色としては,日本語の書字体系に関わる書字言語障害を中心とし,文法障害,残語の構造,また音韻の問題が記載された。本稿でも書字言語の問題を主として述べるが,もちろん失語性障害の範囲に限定し,いわゆる語盲など若干関連ある対象は他にゆずる。
Linguistically, the Japanese language which is a member of the Ural-Altaic language family, has an extremely different structure from the Indo-European languages. This particular struc-ture of the Japanese language is called aggulti-native' and is characterized by the absence of inflections and the presence of special forms of post-positions and particles that substitute for the inflections.
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