特集 臨床細菌検査
Ⅰ.細菌検査の特色
三輪谷 俊夫
1
1大阪大学微生物病研究所
pp.1217-1218
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912014
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臨床細菌検査は感染症の診断・治療に必須であるが,検査施設に提出されてきた患者材料を精密に検査しさえすれば起病菌が検出されるとは限らない.感染症でない患者材料でも環境汚染菌によって汚染されておれば必ず患者材料から微生物は検出されるが,起病菌ではない.臨床細菌検査の目的は,提出された患者材料から微生物を検出することではなく,あくまでも感染症の起病菌を検出し,適確な治療法を割り出すために行うべきものである.
ヒトは無数のいろいろな微生物群に取り囲まれて生活しているため,感染症の起病菌として限られた種類の病原微生物を検索することは極めて困難なことである.しかし,「感染」という概念—宿主の皮膚・粘膜を通過して宿主体内へ病原微生物が侵入して増殖すること—を考えてみると,幸いなことに正常な健康宿主体内には微生物は存在しないことになる.宿主体内とは,臨床細菌学的には皮膚・粘膜で被われている内部を意味し,呼吸器系,消化器系,尿路系,生殖器系などの管腔内は直接外界と接しており,体外と考えるべきであるが,実際的には粘液分泌などの生理的浄化作用やパスツールの白鳥の首型フラスコと同じ原理に基づく解剖学的理由によって環境汚染菌は深部まで到達せず,常在菌が生息している範囲を体外と見なすのがよい.
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