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Ⅰ.問題提起
細胞分裂と細胞移動の時期が終ると,脊髄運動ニューロンは,次第に成熟して成体の神経細胞の性質を獲得する。分化の定義については,あとに詳述するが,まず,幼若細胞が成体細胞の性質を獲得するまでの全過程を分化とみなして,その背景となり得る機構の考察から始めたい。
正常の分化過程を完了する細胞は,発生した脊髄運動ニューロンの約半数だけであり,他の半数の細胞は分化を行なうことなく,その結果,変性し,終局的には死滅する。したがって,分化は,単に細胞の成熟過程だけでなく,細胞死を防止する過程でもありうる。いいかえれば,この時期のある運動ニューロンは,死滅するがゆえに分化を行なわないのではなく,分化しないがゆえに死滅するわけである。最初に起る疑問は,いかにして或る神経細胞は分化に導かれ,他の細胞は分化過程から排除されるかということである。もし,分化過程へのプログラムが,発生期に或る運動ニューロンの中にだけ組み込まれているとすれば,これらの細胞がいかにしてそのような内的因子を獲得するかという疑問が起こる。一方,もし,発生期の運動ニューロンが,すべて,均一の性質あるいは情報を持っているとすれば,分化過程を惹き起こし,細胞死を防止する外的因子は何かというのが次の疑問である。いずれにしても,分化しない細胞がいかにして死滅するかということ自身,ただちに明白でない。
At early embryonic stages, massive neuron death occurs in the spinal cord during normal develop-ment. These stages coincide with those at which motoneurons normally form functional connections with the muscle. When the limb bud is removed before the formation of neuromuscular connec-tions, all motoneurons eventually die. Thus, normal differentiation and its failure in spinal motoneurons appear to depend on some influence from the muscle.
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