Japanese
English
特集 てんかん
てんかんをどう考えるか—その本態をめぐる歴史的考察
Historical Perspective of Epilepsy Concept
秋元 波留夫
1
,
松本 秀夫
1
H. Akimoto
1
,
H. Matsumoto
1
1国立武蔵療養所
1National Musashi Research Institute for Mental and Nercous Diseases
pp.572-585
発行日 1968年10月25日
Published Date 1968/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904529
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I.てんかんの発見
てんかんは有史以前の太古からその存在が知られ,本態の不可解なことや,治療の困難なことで人びとを悩ました業病である。疾患としてのてんかんの記載は,古代ギリシアのヒポクラテス医学(460〜377B.C.)にさかのぼるとされ,その記載によると,ギリシア人が"神聖病(morbus sacer)"とよんていた疾患がそれであると推測される。唐突におこる意識喪失と激しい身体の動きが終わると8)63)台風一過,たちまち平常の状態にもどる。この典型的なてんかん発作は古代人にとつては神秘であり,神意の発現としか理解することができず,てんかん者は神聖視された。ヒポクラテス医学は,この俗説が誤謬であることを明らかにし,いわゆる神聖病は脳の病気に他ならないことを説き,俗間に行なわれる魔法は不当であり,薬によつて治療すべきものであることを説いた。
ヒポクラテス医学のてんかんについての疾病観は,現代の考えとさほど違わないものであつたが,しかし民衆の常識としで一般化することができず,依然として誤まつた偏見が支配的であつた。
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