Japanese
English
特集 日本脳炎
小児期にみられる急性脳症の鑑別
Acute Encephalopathy in Infancy and Childhood
小宮 和彦
1
,
高津 明男
1
,
松岡 赫子
1
,
永野 正敏
1
,
有馬 正高
1
,
須田 碩人
2
Kazuhiko Komiya
1
,
Akio Takatsu
1
,
Kakuko Matsuoka
1
,
Masatoshi Nagano
1
,
Masataka Arima
1
,
Sekito Suda
2
1東邦大学医学部小児科学教室
2東邦大学医学部病理学教室
1Department of Pediatrics, School of Medicine, Tōhō University
2Department of Pathology, School of Medicine, TōhōUniversity
pp.312-322
発行日 1967年8月25日
Published Date 1967/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904411
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I.緒言
小児の特徴は活発な発達を営むことにあるが,とくに中枢神経系の発達はいちじるしい。発達に伴う中枢神経系の解剖学的変化は,脳水分量とくに細胞外水分量の減少,髄鞘形成に伴う脂質の増加,神経細胞のdendriteの延長と分枝の増生,脳頭蓋間隙の増大などをあげることができよう。一方,これらの発達に伴う変化を反映して,小児期には,成人と異なる脳障害のpatternを示すことも周知の事実である。たとえば,発熱に際して容易に痙攣をもつて反応しやすいこと,全身の水分,電解質のbalanceが障害を受けやすいため,その結果として重篤な脳症状を呈することが稀ではないこと,脳浮腫や痙攣性脳障害が激烈な経過をとり,重篤な軟化や脳萎縮を容易に,かつ,すみやかに招来しうることなどをあげることができよう。
事実,元気に生活していた小児が,急激な脳症状を呈して死亡したり,痴呆,除脳硬直などの重篤な後遺症を残すことは,稀ならず経験されることであつて,脳炎と誤診されやすい脳症の症例は典型的な脳炎よりもはるかに高頻度に存在するように思われるのである。急激な脳症状をきたす原因疾患の数はきわめて多い。また,遺憾ながら臨床的にも,病理解剖学的にも原因をまつたく見出しえないことすら稀ではない。しかし,原因の究明は治療への第一段階であり,さらに,小児の脳の反応の特殊性を認識して病像の解析を行なうことが正しい対策を樹立するうえに不可欠のことと思われる。
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