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特集 小児神経病学
小児期における神経系の発達—生化学的方面
The Developements of Nervous System in Infancy from Biochemical Aspects
中 脩三
1
Syuzo Naka
1
1大阪市立大学医学部精神神経科
1Dept. of Psychiatry, Osaka City University, Medical School
pp.211-219
発行日 1962年7月25日
Published Date 1962/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903958
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緒言
小児期における神経系の発達について,その生化学的方面を記載し得る人はおそらく世界にも一人もいないであろう。それほどこの方面の学問はおくれている。いつたい生後の脳のあのすばらしい解剖学的変化について,何か生化学的解釈があるのであろうか?細胞の増殖,神経細胞の分化,グリアの形成,髄鞘化,それに記憶の蓄積,思考,行動等のメカニズムに対する生化学的アプローチは,夢のようであるとさえ考えられていたのである。R. W, Gerardは,先だつて日本に来られての話では,精神と生理の間の橋はもうだいたい骨組ができた,後は欄干を作つたり,装飾したりすることだけであると言つた。はたしてそうであろうか? Holger HydénやCaspersonの言うように,はたして脳RNAが記憶物体であろうか?Gerardは,DNAが種の記憶に関係あるなら個性の記憶がRNAに関係してもおかしくはないと言う。しかしそれらの裏附けは正に脳の発育の生化学的研究でなくてならぬと思う。
胎児はほとんど神経系の発育が重要な役目でそれは神経系が如何に複雑であるかを示している。まずできるものは神経管であり,それに手足がつくと言つてもさしつかえがない。
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