Japanese
English
特集 脳血管性障害・II
脳血管変化の組織化学
Histochemistry of the Several Cerebrovascular Diseases.
石井 毅
1
Tsuyoshi Ishii
1
1都立松沢病院
1Matsuzawa Metropolitan Mental Hospital
pp.469-479
発行日 1961年9月25日
Published Date 1961/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903929
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I.まえがき
血管はきわめて複雑かつ特殊な機能をもつた器官であって,これを単なるこ液体運搬のためのパイプのように考えることはできない。動脈壁はそれ自体としての物質代謝も活発であり,種々の物質の合成能力,複雑な酵素系の存在等も次第に明らかにされつつある1)。さらに脳血管においては,血液脳関門という特殊な機構の存在が古くより知られていて,その間の事情は一層複雑である2)。この血液脳関門の機構もおそらくは酵素学的なものが主役を演じているであろう3)。
このようにみてくると,脳血管の病変においてもそのはじまりの時期では機能的,酵素学的意味での病変であると思われる。しかしながら,器質的変化として組織学的にキャッチできるのは,病変が余程進んだのちで,しかも或程度の固定状態になつてからのことである。だから,組織病理を基盤とする組織化学も多くの場合比較的末期の状態を対象とすることで満足せざるを得ず,初期の機能的側面の解明は方法的に困難である(酵素学的組織化学においても,人の疾患の組織の場合は材料その他に困難があり,きわめて限られたことしかできない)。この意味では組織化学は生化学的方法には及ばない。しかし一方において従来の生化学的研究は組織病理が長年月にわたつて貯えた貴重な成果を十分顧慮しているとはいい難い。
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