Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- サイト内被引用 Cited by
I.はじめに
脳卒中,頭部外傷その他による重症脳損傷患者が,医療技術の進歩とくに集中的管理機溝の高度化,および超濃厚治療により,過去においては,必ず死亡したであろう状態から回復し,社会復帰も可能となってきた。しかし一方では,過去の医療では想像もできなかった深刻な問題,いわゆる"植物症患者"の増加は,単に医学の面からだけでなく,社会問題として大きくクローズアップされて来た。アメリカで起こった"カレン裁判",わが国における"医療辞退連盟"発足の呼びかけ,さらには"ポックリ寺"の繁盛など,"最近では,そう簡単に死ねなくなった"という逆説的見解が,感傷的なひびきをもって人びとの心を捉えている。人命は地球より重いのだと信じ,1日でも延命させることにすべての努力を払ってきたわれわれが,ふとわれに帰ったとき,人類が数千年の歴史を通じて培ってきたヒューマニズムを,根底から考え直さざるを得ないような重大問題を提起し,幸福に奉仕するはずの医師が,死出の旅路の免罪符発行人としてその渦中に巻き込まれようとしている。
以上のような深刻な背景を心にとめながら,"植物症(患者)"を医学的な立場から定義,分類し,意識の問題にもふれてみたい。
Despite the technical advances made in modern neurosurgery, many patients with severe brain damage only survive in the vegetative state for many years without recovery. This has forced their families, their physicians, and the community to bear an almost intolerable burden. A new unpredictable situation never experienced before in the history of man has developed.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.