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Ⅰ.緒言
ある症例の病理所見を検討していて,これまでにあまり知られていない珍しい形態異常を見出したからといって,それをただちにその症例が有している疾患の特徴的所見であると判断することは,常に正しいことであるとは限らない。病理所見を出発点として提唱されたいくつかの筋疾患の概念が,現在種々の批判の対象となっているのもこの意味からして当然といえるが,このmyotubular myopathyもそれらの疾患のうちの一つとして数えることができる概念である。この概念に属する症例の最初の報告は,Spiro,Shyら(1966年)によってなされた。彼らは筋線維の中心部のみに異常所見を有し,周辺部は正常な特異的な症例を見出し,このような筋線維の形態は発生途中の胎児筋のmyotubeに類似しているところからこの疾患の発現機序を筋発生の休止(arrest of myogenesis)と考えてmyotubular myopathyと命名して報告した。しかし,その後Sherら(1967年)はこの筋発生の休止という考えに賛成せず,類似の変化を有する家族例をcentronuclear myopathyと別な名称をつけて報告した。さらにCampbcllら(1969年)は中心の核の周囲に見られる変化がミオパチー様である点からperi-centronuclear myopathyとまた異なった命名をして症例報告を行なった。
In 1966, Spiro et al first described a boy who had muscle fibers with central nuclei surrounded by clear areas. They considered that those fibers represented persistence of fetal myotubes due to an arrest of myogenesis, and termed the condition "myotubular myopathy". However, Sher et al reported similar case under another term "centronuclear myopathy", because they did not agree with the concept of maturation arrest as the pathogenesis of the condition.
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