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故 時實利彦名誉教授を偲ぶ
時實利彦先生を偲ぶ
To the memory of Professor Toshihiko Tokizane
島津 浩
1
Hiroshi Shimazu
1
1東大脳研生理
1Department of Neurophysiology, Institute of Brain Research, University of Tokyo
pp.1011-1012
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903560
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- Abstract 文献概要
時實利彦先生は昭和48年8月3日,63歳のお若さで逝去された。ここに限りない敬慕と哀悼の心をこめて思い出の文をつづる。
私が東大医学部生理学教室の故坂本嶋嶺教授につれられて時實先生にはじめてお会いし同時に入門したのは昭和25年,先生は40歳で同教室の講師をしておられ,私は医学部3年の学生であった。当時先生は筋電図の研究を始められて間もなくの頃で,医学部1号館の真中にあったエレベータ用と思われる縦穴に板を張ってシールド室をつくり,そこを実験室にしておられた。戦後間もない頃であるから,機械といえば古ぼけたブラウン管と記録用の電磁オシログラフだけであったが,これがわが国における筋電図研究の草分け時代で,近藤・津山・小片・清原・野村・村尾の諸先輩方が先生の御指導をうけて活溌な研究をしておられた。実験中の先生の激しさは格別で,学生の私には短気とかせっかちという言葉が適切なほどにすさまじいものに思われ,ふだんの先生の温顔からは想像もできないほどであった。しかも四季を通じて日曜以外は1日たりとも実験を休まれる日はなく,昼間用事に追われて地下の講師室にこもっておられる日でも夕方になるとちょっと筋電図をとりましょうと実験室に誘われた。まるで毎日のノルマをきめて御自分を酷使しておられるのではないかとさえ思われた。先生の御自分に対する厳しさはその後も終生変わられることなく,私は怠け心を起こす度に当時を思い出しお叱りをうける思いがしている。
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