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失語症に関するリンネ(1745年)の記録
Carl Linné's Description on Aphasia in 1745: Japanese Translation
豊倉 康夫
1
Yasuo TOYOKURA
1
1東京大学医学部脳研・神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.563-564
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903410
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- Abstract 文献概要
文豪ゲーテが,「ウイルヘルム・マイスターの修業時代」という小説(1795年初版)の中に,典型的な運動性失語症を示した脳卒中後遺症(右片麻痺)の例を述べているのは,すでに有名な話である。しかし,失語症に関するさらに古い記録についても非常に多くの研究がある6)。その歴史に関する医史学的な総説も少なくないし,最近になってもまだ,今まで気づかれていなかった文献がたまたま発見された事例もある。言葉を話し,理解することが人類の最も基本的な特徴の一つであるとすれば,その機能の喪失した状態こそは,人類の初期の時代から当然最大の関心事であり,奇妙な現象と考えたにちがいない。Bentonらの総説(1960)5)によれば,結局ヒポクラテス(400 B. C.)の記録にまで遡ることになるというのも,故なしとしないのである。
ここに訳出しようとする失語症についての古い記録の一つは,カルル・リンネ(Carl Linné;Carl Linnaeus,1707-1778)が1745年に書いた"Glömska af alla substantiva och i synnerhet namn"(名詞とくに固有名詞の記憶喪失)という論文である(図1)。リンネはこれをKongl. Swenska Wetenskaps Academiens Handlingar,Stockholm(スウェーデン王立科学アカデミー雑誌)の6巻,116-117頁,1745年,に発表した。
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