Japanese
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特集 脳の奇形と発生
脳の奇形と遺伝
Malformation of the brain and genetics
有馬 正高
1
Masataka ARIMA
1
1鳥取大学医学部脳神経小児科教室
1Section of Child Neurology, Tottori University School of Medicine
pp.213-217
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903369
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奇形の発生に遺伝の占める役割については従来数多くの研究と仮説があり,純粋な遺伝や環境は比較的少なく,大半は遺伝的な素因の上に環境が加わったものであろうと推察されている。奇形発生における多因子説や閾説は,その表現であり,動物において外因に対する奇形の発現率が種属によって異なることや,交配の組合せによっていろいろな段階の奇形が起こりうることなどがその根拠に含まれている。中枢神経系の奇形も例外であるという証拠はないが,中枢神経奇形の場合には定義が他の奇形の場合よりも複雑であって臨界期なども同一には論じがたい。また,人間という種にみられる脳の奇形にどの程度多因子説が適合しうるかという問題になると全く不明である。少なくとも,臨床家の立場からすれば,明らかに遺伝性のものと,明らかに環境要因によるものをできるかぎり識別し,そのいずれともつかないものをどう分析するかということが課題として残るであろう。脳の奇形のなかでこのような観点にたって分析されたものはきわめて少ないのであるが,筆者の経験を加えながら現状と今後の問題点について考察したい。
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