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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—ウイルス感染と神経系(いわゆるslow virus infectionの考え方)
Cytomegalovirus感染の神経病理
Zur Neuropathologie der Cytomegalie
小田 雅也
1
Masaya Oda
1
1東京大学医学部脳研究施設病理部
1aus der Abteilung der Neuropathologie im Institut für Hirnforschung der Universität Tokyo
pp.470-489
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903263
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I.はじめに
中枢神経系のウイルス感染症のなかで,Cytomegalovirus感染のもつ意義の一つは,このウイルスが非常に弱毒性のもので,かつ生体内とくに唾液腺に長く潜在性にとどまり,個体側の特殊な条件下で,いわば偶発的に増殖し,病原性を示すに至る点にある。Rowe et al.(1956)16)の研究では,生下時71%,6-23か月乳幼児14%,18-25歳53%,35歳以上81%に血清抗体価の上昇が証明されることや,小児剖検例の10〜12%は唾液腺に,1-2%は,それ以外の臓器にも,封入体をもつ特長的大型細胞が発見される(Seifert & Oehme 195724))ということからも,潜在感染が高率なことが物語られる一方,新生児では重篤な全身疾患をおこして死に至らしめることを除くと,脳症状や全身症状を呈することは少なく,多くは剖検例の副所見としてのみ,本ウイルス感染が記載される程度のものである。つまり,この意味では,本シンポジウムの主題であるslow virus感染の一面の性格をもつともいえる。
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