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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—ウイルス感染と神経系(いわゆるslow virus infectionの考え方)
狂犬病ウイルス増殖の形態学
Morphological Studies on Rabies Virus Replicatlon
松本 清一
1
Seiichi Matsumoto
1
1京都大学ウイルス研究所
1Institute for Virus Research, Kyoto University
pp.446-451
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903259
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Ⅰ.
狂犬病はウイルス性脳脊髄炎を本態とする古代にすでに記載のある伝染病である。ウイルスの証明は1903年に早々にRemlingerの濾過実験によつて行なわれ,またPasteurおよびその一門による有名な固定ウイルスによる予防接種の成功でも本病はよく知られている。しかしその後のウイルス学的な知見の蓄積は比較的貧弱で,他の多くのウイルスに較べて,とくに基礎的な研究は遅れているといわざるを得ない。その最大の原因は研究術式上の進歩,改善が狂犬病ウイルスの場合に割合困難であつた実情によるものであろうが,最近この方向での努力が漸く実り始めてきた。その最も有力な進歩は感染能率の高い培養細胞系の発児が相ついでいることであり,かくて本ウイルスの研究が細胞のレベルで,さらに分子生物学的な水準で展開されるようになりつつある。
狂犬病の病理発生については,その感染発病の重篤な点からも想像されるように実際面で早くからとりあげられ研究されてきた重要な領域であるが,現在最も重要な点はつぎの二つの問題に絞られるであろう。第一は感染動物体内におけるウイルスの伝播(spread)の場合である。狂犬病の潜伏期は平均30日といわれるが,時に10か月に及ぶものもあり,変動の激しい点が特徴であり,その日数は咬傷部と中枢神経との距離に比例する傾向がある。
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