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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—ウイルス感染と神経系(いわゆるslow virus infectionの考え方)
狂犬病—向神経性ウイルスなる概念について
Rabies: A General Idea of Neurotropic Viruses
大谷 杉士
1
Sugio Ohtani
1
1東京大学医科学研究所
1The Institute of Medical Science, University of Tokyo
pp.439-445
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903258
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Ⅰ.狂犬病ウイルスの向神経性
人の狂犬病にしても動物のそれにしても,臨床像からいえば,その病気は狂犬病ウイルスが中枢神経系で増殖した結果である。だが,ウイルスの伝播,ひいてはそのウイルスが自然界に存続しうるために重要なことは,このウイルスが腺組織とくに唾液腺で増殖する性能をもつことである。
われわれが現在のところ明確に知つているのは,人,犬,狼,狐などでは咬まれた傷口からウイルスが侵入し,中枢神経系と唾液腺その他の腺組織で殖えることである。その際に,侵入したウイルスは末梢神経に沿つて求心性に進んで(centripetal passage via peripheral nerves)中枢神経に至り,そこからふたたび末梢神経に沿つて遠心性に(centrifugal passage via peripheral nerves)唾液腺に至ると考えられている。ただしこの想定はあくまで間接的な証拠によるものであつて日本脳炎の場合のような血行を介するものではないと断定するに足る直接的な根拠はない。
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