特集 感染症の新たな脅威
狂犬病
井上 智
1
1国立感染症研究所獣医科学部第二室
pp.467-472
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208219
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狂犬病は,動物由来感染症(Zoonosis,人獣共通感染症)であり,すべての哺乳類が狂犬病ウイルスに感染して発症する.しかしながら,流行を維持している動物種は限られており,国や地域によってヒトが感染する危険性の高い動物種は異なる.食肉目に属する犬,キツネ,アライグマ,スカンク,マングース,コヨーテ,オオカミ,ジャッカルなどで流行が維持されているが,アメリカ大陸ではコウモリにも狂犬病が流行している.狂犬病の発生している地域では,人の生活に近接するペット動物(主に犬と猫,米国ではフェレット)が人に対して最も健康危害度の高い動物となる.毎年,世界中で5万5000人以上が狂犬病で死亡しており,その30〜50%は15歳以下の子供,患者の99%以上は狂犬病を発症した犬による咬傷が原因であると言われている(図1).
いったん狂犬病を発症すると,そのほとんどは10日以内に100%死亡する.現在も有効な治療法は確立されていないが,狂犬病ワクチンによる曝露前予防接種によって発症予防が可能であり,狂犬病ウイルスの感染が疑われた後でも,直ちに狂犬病ワクチンによる曝露後予防接種を行うことで発症を阻止できる.
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