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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—脳研究のあり方(パネル討論)
脳研究所の構想
The System of Brain Research
植木 幸明
1
Komei Ueki
1
1新潟大学脳研究所脳神経外科
1Department of Neurosurgery Brain Research Institute Niigata University
pp.419-421
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903254
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私の歩んできた臨床医学,脳神経外科学を振りかえつてみると,多忙な診療に追われ,その診療自体にも充分満足できない悩みをいだきつつ,一方では絶えず研究をしなくてはという念にかられ,それを何とか試みながら過してきて,相変らず忸怩たる思いをいだいているというのがいつわらざる心境である。それは神経科学の臨床部門においては,いかに多くの疾患が本態不明のまま残されているか,治療の限界がいかに大であるかそしてその本態解明が,治療の向上が日常の診療を通じてたえず重苦しくのしかかつているからである。
広い医学の分野でいくつかの輝かしい研究が実を結び,臨床医学へ還元され,多くの人々がその恩恵を受け,医学の進歩が評価されている。その中でたとえば脳神経外科の中心課題であるグリオームの治療に関しては,Cushing以来40年ほとんど進歩していないという現実がある。もちろん最近にいたり麻酔学の進歩,手術方法の改良,術前術後の全身管理の進歩向上,放射線治療学の進歩などにより治療成績の向上はみられてはいるが,グリオーム自体への基礎医学的アプローチは貧弱であり,相変らず脳神経外科学を専攻する者の大きな悩みとなつている。医学全体の進歩の中で脳神経外科学の領域においても幾多の治療成績の向上がみられているが,決して満足さるべき状態ではない。
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