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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—日本における神経化学
脳の代謝調節とコンパートメンテイション
Metabolic Regulation and Compartmentation in Brain
高垣 玄吉郎
1
Genkichiro Takagaki
1
1慶応義塾大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Keio University School of Medicine
pp.312-318
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903238
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I.はじめに
本稿において筆者は脳の代謝の特徴を代謝調節の問題として考え,以下の二つの項目について現在の知見を述べたいと思う。脳は形態学的にきわめて特徴的な臓器であり,組織構造は複雑な多様性を示している。このことが代謝の特徴にも反映しているのは勿論であつて,脳に特有な物質あるいは脳に特有な酵素系が脳の代謝を特徴づけている以上に,他の臓器組織と基本的には同じ代謝系でも,その活性が組織構造の特徴と関連して特別な機構で調節されていることが考えられるであろう。
代謝調節の問題は最近いろいろの点でかなり明らかにはなつた。しかし形態学的に単純な系についてさえ,そのin vivoの代謝調節についてはその機構を可能性として議論しうるだけであろう。形態学的にも機能的にもきわめて複雑な脳の代謝調節については,現在の知識は非常に限られており,現在の実験技術の範囲ではあまり研究成果は期待できないかもしれない。しかし,脳の特異な代謝の現象を手がかりとしてその機構の分析を行なえば,代謝調節の特徴を知ることができるだろうし,それと脳の機能的特徴との関連をも明らかにすることができるだろうというのが筆者の立場である。
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