特集 神経解剖
ニューロン説の生い立ち—S.R.y Cajalの原典より
萬年 甫
1
Hajime Mannen
1
1東京医科歯科大学医学部難聴研究施設
1Institute for the Deaf, Tokyo Medical and Dental University
pp.925-927
発行日 1962年11月25日
Published Date 1962/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901945
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まえがき
ニューロン説は今日の神経学を支えている最も重要な考え方のひとつであるが,ひとり医学にとどまらず生物学全般にわたり,およそ神経系をあつかう者はすべての思考をこの説に発していると申しても決して云いすぎではない。この説を詮じつめれば,ニューロンは接触によつて連絡し,1個のニューロンの中では機能の分化が行われて樹状突起と細胞体は求細胞性に,軸索は遠細胞性に伝導を行うというものであるが,これ程大きな意義をもつ説が一体誰によつてなにを根拠にして築き上げられたかについては必ずしも充分に知られているとはいえないように思う。わたくしは昭和36年4月第2回日本臨床神経学会(会頭沖中重雄教授)において,「S.R.y Cajalのあとを」と題する講演を行い,その中でこの問題についていささかふれるところがあつた**。ここに訳出した3篇の論文はその際の最も核心にふれる重要な参考文献で,これを読むとき今日われわれがニューロン説についてもつている概念のほとんどすべてをCajalに負うていることがはつきりと分るのである。その意味で,この訳稿とともに上述の拙著を併続いただければ幸である。
Cajalがニューロン説そのものを扱つた論文は実はもうひとつある。1889年にかかれたもので,題して"Conexión general de los elementosnerviosos."
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