Japanese
English
総説
脳神経に支配される横紋筋の固有知覚(プロプリオセプション)について—その形態学的研究の展望
On the proprioception of the striated muscles innervated by cranial nerves
細川 宏
1
Hirosi Hosokawa
1
1東京大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, University of Tokyo, School of Medicine
pp.827-860
発行日 1960年8月5日
Published Date 1960/8/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901799
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はじめに
一般の骨格筋を支配する神経には,運動性(及び自律性)のものの外に知覚性のものがあり,この後者がいわゆる筋肉の固有知覚(プロプリオセプション)を伝えて固有反射(または伸展反射)の仕組みに参画し,筋肉の機能上重要な役割りを果していることは今日周知のところである。固有知覚にあずかる神経の形態学的事項については,その終末装置を代表する筋紡錘や腱紡錘の構造がほぼ明らかとなり,またこれらを支配する神経線維の末梢経過や,その神経細胞が脊髄神経節内に位置する事実も確かめられ,さらに後根を経て脊髄に入つた後の中枢内経路が,多数の側枝をもつて複雑な反射弓を形成しつついわゆるゴルやブルダツハの束を上行して後索核に至り,ノイロンを替えかつ交叉して内側毛帯となつて視床に達した後,さらにノイロンを替えて大脳皮質の体知覚領域に至るらしい事がほぼ一般に認められているといつてよい。ところが同じ横紋筋でありながら,脳神経の支配領域にある筋肉についてはその知覚性神経支配の詳細に関して極めて不明瞭な点が数多く残されており,そもそも固有知覚の存否すらもさだかでない筋肉さえある。
脊髄神経に支配される体幹や四肢の筋肉に比べて,脳神経領域の横紋筋の知覚性神経支配に関する知識が著しく遅れた原因にはいろいろある。
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