特集 第1回国際神経科学会展望・2
脱髄疾患の病理
Main speeohesに対する討論—George Schaltenbrapd:PetersとLumsdenに対する討論
山本 達也
pp.670-679
発行日 1958年4月30日
Published Date 1958/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901640
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著者は脳浮腫の発生におけるVirchow-Robin腔の意義をLumsdenほど評価していない。つまり今日,血液から脳内に入り,また脳内の液が毛細管から再吸収される液体運搬の過程は,細胞内(intrazellulär)におこるもので,細胞間(interzellulär)ではないという事実については多くの証明があるという。たとえば電子顕微鏡でみると,正常脳ではまつたく細胞間腔がなく,グリアが神経細胞と軸索への,またそれらからの必須物質の運搬にたずさわつているのである。そこで組織液の漏過と再吸収との間の転向点(Umkehrpunkt)に,純機械的の偏倚がおこると,組織の腫張または脱水をきたすと考えられる。たとえばもし細胞におけるイオン平衡が強くおかされると,すでにいちじるしく腫張した神経組織から,組織液がひろがつた間質腔にあらわれてくるのであつて,ここに脳浮腫と脳腫張との移行がみられるのである。ヒベルエルギー性現象のときには,血管から大量の液体が浸出してきて,組織にいちじるしい人工産物ができる。たとえばヒスタミン中毒のときのように,血清が間質腔隙に浸出し,またこの血清がふたたび急速に吸収される。ここでは血管周囲腔はまつたく何の役割をも演じていない。そしてこのような機序を,脱髄にあてはめることはできないと信じる。
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