トピックス
髄液中タウ蛋白—アルツハイマー病診断の試み
石井 一弘
1
,
森 啓
1
1(財)東京都精神医学総合研究所分子生物学部門
pp.170-171
発行日 1997年2月1日
Published Date 1997/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902995
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はじめに
痴呆をきたす疾患の大部分は,脳血管性痴呆とアルツハイマー病(アルツハイマー型老年痴呆も含む)の2つで占められている.近年,脳血管性痴呆は血圧管理や治療の進歩により,ある程度予防可能となってきたが,アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)はいまだに原因が明らかでなく,したがって治療ならびに予防法も確立されていない.また,ADを客観的にしかも確実に診断できる生化学的マーカーはいまだ存在しない.その生前診断は臨床診断基準に従い,コンピュータ断層撮影(CT),核磁気共鳴画像(MRI)やポジトロン断層撮影(PET)などの画像所見を組み合わせて総合的に診断しているのが実状である.さらに痴呆を伴う他の変性疾患との鑑別が困難な場合も多く,剖検脳において,ADの病理学的所見である異常蓄積物の老人斑(球状のしみ)や神経原線維変化(糸くず状),神経細胞数の減少などが確認されて,最終的にADと診断される.最近,ADの臨床的診断マーカーとなりうる酵素抗体法(enzyme linked immunosorbent assay;ELISA)のサンドイッチ法による髄液中タウ蛋白定量法が確立され,ADの補助診断として注目されている.
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