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特集 第31回脳のシンポジウム
神経組織の細胞接着蛋白
シナップス標的認識分子―ファシクリンⅢ(抄録)
Fasciclin Ⅲ: a synaptic target recognition molecule
堀田 凱樹
1,2
Yoshiki HOTTA
1,2
1東京大学大学院理学系研究科物理学教室
2東京大学遺伝子実験施設
1Department of Physics, Graduate School of Science Molecular, University of Tokyo
2Molecular Genetics Laboratories, University of Tokyo
pp.961-962
発行日 1996年12月10日
Published Date 1996/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900803
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- Abstract 文献概要
神経系の神秘的にさえ見える高次機能の基本は発生過程で組み立てられる複雑だが正確な神経回路にある。個々のニューロンが(自分自身の大きさに比べれば)はるか遠くにある標的細胞に向かって軸索を伸ばし,標的の近傍に近づくと,軸索の先端は成長円錐(Growth Cone)を形成して周辺を広くサーチする。やがて正しい標的を発見すると,そこにのみシナップスを形成する。この分子機構は,細胞認識の極致として現代の分子神経生物学のもっとも興味深いものである。1960年代の半ばにRoger Sperryらはカエルの視神経や表皮感覚神経のつなぎ換え(移植)実験の結果からその中枢神経系とのシナップスパターンはきわめて正確であることを示し,各ニューロンの細胞表面に異なる分子が存在していて,その分子間の親和性によって一つ一つのシナップスの特異性が決まるとする“化学親和説(Chemoaffinity Theory)”を提唱した。当時は抗原抗体反応のような特異分子が個々のニューロンごとに分化して存在するイメージが考えられたが,その後の多くの研究者の努力にもかかわらずその分子的実体は明らかにならなかった。
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