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はじめに
前章で述べた破壊実験やヒトの臨床病理学的研究から,側頭葉内側部にある大脳辺縁系(辺縁系)が認知・記憶機能を含むヒトの様々な高次脳機能に深く関与していることは明らかである。とくに,1957年のScovilleとMilnerによる健忘症患者H. M. の臨床神経心理学的研究に基づく側頭葉内側部,とくに,海馬体と記憶機能に関する報告が転機になった。これらのことから,海馬体が記憶機能に関与することはほぼ確かであるが,記憶過程でこれら領域のニューロンが実際にどのような応答を示すのか,ごく最近まで不明であった。これは,これまで技術的な問題から,ヒトに近い霊長類であるサルを用いて,様々な状況下,とくに,動物の居場所を移動して認知・記憶課題に対する辺縁系のニューロンの応答様式を解析した実験が皆無であったからである。本稿ではまず,最近の海馬体と認知・記憶に関する研究について概説し,ついで筆者らのサルのニューロンレベルでの研究から得られた知見を紹介する。
It has been suggested that the hippocampal system is involved in the formation of human episodic memory based on multiply associative coding. Rat hippocampal neurons respond to patterns or relations of multiple stimuli (Sharp et al., 1990). Lesion studies suggest that the hippocampal formation is crucial in learning associative relations among multiple cues or factors such as configural association (Sutherland and McDonald, 1990), relational representation (Eichenbaum et al., 1990), snapshot memory (Gaffan and Harrison, 1989), and object-place association (Parkinson et al., 1988).
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