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はじめに
1980年代のはじめ海馬における長期増強現象(LTP)の発現に,グルタミン酸受容体の刺激を介したシナプス後細胞内のCa濃度の上昇が関与していると示唆されて以来,海馬ニューロン内のCa濃度の動態を明らかにしようとする研究が本格的に始められたように思う。この仮説はCaイオンキレーターを細胞内に投与したり,細胞外液のCaを除去した後にはLTPが成立しないという間接的な証拠や,外液のCaの上昇によってグルタミン酸受容体の数が増大するという結合実験をもとに提唱されたものである1)。当時,細胞内Ca濃度の測定法がなかったわけではない。たとえば,エクオリンやアルゼナゾⅢなどのCa指示薬はすでにあったし,Caイオン電極もあった。しかし,せいぜい10から15ミクロンほどの海馬の細胞体にこれらを適用することは困難であり,たとえ適用できたとしても,その操作による膜の損傷が細胞内Ca濃度を高めてしまう恐れがあった。実際に,細胞内Caイオン電極を海馬ニューロンに適用した例では静止レベルのCa濃度がμMオーダーであると報告されている2)。また,グルタミン酸を投与すれば脱分極が生ずるから細胞内Caが上昇するのは当然であると考える風潮もあってか,実際に海馬ニューロン内Caを測定しようとする試みはほとんどなかった。
Recent advances in the fluorometry of intracellular Ca2+ concentration ([Ca2+]i) enabled detecting the time course and the two dimensional distribution of [Ca2+]i in single isolated cells as well as the tissue preparations. Since the role of Ca2+ on the modulation of the efficacy of synaptic transmission, such as long term potentiation (LTP), has been suggested from physiological and biochemical studies, the methods have been applied to neuronal cells in culture and slice preparation, and elevations of [Ca2+]i during neuronal activity have directly been shown.
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