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はじめに
脳虚血などの場合には,時間を追って神経細胞死が起こり,さまざまな脳機能障害が生じる。それにはさまざまなメカニズムが想定されているが,最近の研究によって,神経細胞内の遊離Ca2+濃度の過剰な上昇が神経細胞死の一因として強く示唆されるに至った。本稿では,主として損傷や卒中のさいに起こる脳虚血部位にみられる遅発性神経細胞死へのカルシウムの関わりを扱う。最初に細胞内のCa2+がどのように維持されているかについて簡単にふれた後,カルシウムによって惹起される神経細胞死のメカニズムについて論じ,最後に神経細胞死の治療についても述べる。この分野は最近非常に活発になってきており,多くの研究が現在行なわれている。しかし,神経細胞の死というむずかしい問題であるから,多くの面において必ずしも明快な答が得られているわけではない。したがって,本稿でも明確な証拠に基づかない議論が必然的に入ってくることになるが,現時点での総括と今後の展望を論じることは有意義であると思う。
Researches on the causal relationship between calcium ions and neuronal cell death observed under conditions such as ischemia, trauma and stroke, are briefly and critically reviewed. Delayed neuronal cell death occurring under these conditions is possibly triggered by paroxysmal release of glutamate (excitotoxicity). Recent studies strongly suggest the involvement of breakdown of intracellular calcium homeostasis in delayed neuronal cell death, although the compelling evidence is still lacking.
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