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I.まえがき
Gタンパク質は細胞膜受容体による情報伝達において重要な役割を果たしている。Gタンパク質は最初,アドレナリンなどのホルモン受容体と連関し,アデニレートシクラーゼを活性化するGタンパク質であるGs,および網膜の光受容体であるロドプシンと連関し,光情報増幅機構を担うトランスデューシン(Gt)の2つの系を中心として研究が行なわれてきた。しかしここ数年来,タンパク精製およびcDNAクローニングの手法を用いて,多数のGタンパク質の存在が知られるようになり,現在少なくとも12種のGタンパク質がみつかっている。またGタンパク質はフォスフォリパーゼCやフォスフォリパーゼA2の活性化も調節し,イノシトール3燐酸(IP3),ジアシルグリセロール(diacylglycerol;DAG),アラキドン酸やこれらの代謝産物の産生を制御している。
ホルモンや神経伝達物質によりイオンチャンネル電流が調節されることはよく知られた事実であるが,この調節機構にGタンパク質が深く関係していることが,分子生物学的手法やパッチクランプ法を用いることにより明らかとなってきた(Birnbaumer, et al.,1990;Brown,1990)。Gタンパク質によるイオンチャンネルの制御調節には,2つの機構が考えられている。第1の機構は,Gタンパク質による効果器の活性化により,細胞内にcAMP,cGMP,IP3,DAGあるいはアラキドン酸などのセカンドメッセンジャーが産生され,それがチャンネル分子に作用して開閉を制御調節する機構である。このような制御様式の例として,ブラジキニン(bradykinin)受容体やムスカリン性アセチルコリン受容体と連関するフォスフォリパーゼC促進性のGタンパク質であるGp(Taylor, et al.,1990; Smrcka, et al., 1991)を介する系が知られている。GpがフォスフォリパーゼCを活性化させ,セカンドメッセンジャーであるIP3とDAGが産生される。IP3は細胞内Ca2+遊離を引き起こし,Ca2+依存性K+チャンネルを開口する(Higashida and Brown,1986)。一方,DAGは蛋白リン酸化酵素C(Cキナーゼ)を活性化し,チャンネル分子をリン酸化し,その活性を制御することが知られている(Higashida and Brown,1986)。フォスフォリパーゼCの活性化にはGタンパク質(Gp)が連関することが,GTPの非水解化アナログであるGTPγSを用いた実験で示唆されてきたが,百日咳毒素非感受性のGタンパク質の一種であるGqはフォスフォリパーゼCを活性化することが,最近報告された(Smrcka, et al., 1991)。しかしながらGpをには,好中球やHL60細胞でみられる百日咳毒素感受性のGp,Jurkat細胞でみられるコレラ毒素感受性のGp,および肝細胞や星状細胞でみられる細菌毒素非感受性Gpの少なくとも3種類のGpが存在し,そのすべてについてGpの分子が同定されているわけではない。したがってフォスフォリパーゼCの活性化機構を解明するには,Gp分子の同定および他のGタンパク質とGpとの関わり合いを調べることが急務となっている。
Three distinct subtypes of Giα (the α-subunit of the G-protein linked to inhibition of adenylate cyclase, Gi) have recently been described. In order to study the physiological role of each of these subtypes, we have investigated changes in receptor-mediated signal transduction induced by the expres-sion of different Gia cDNAs in cultured cells. RNA blot hybridization analysis and immunoblot analysis showed that NG108-15 neuroblastoma-glioma hybrid cells contain endogenous Gi2α and Gi3α but no detectable amounts of Gi1α. NG108-15 cells were then transfected with expression vectors containing cDNA encoding Gi1α, Gi2α or Gi3α. Exogenously-derived Gi1α expressed in NG108-15 cells was found to suppress bradykinin-induced phospholipase C activity. Neither exogenously-expressed Gi2α nor Gi3α affected this activity. By contrast, only exogenous Gi3α mediated the inhibition of voltage-dependent high-threshold Ca2+ current via muscarinic acetylcholine receptors. These results suggest that each Giα transduces distinct signals generated by cell surface receptors.
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