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綜説
神経成長因子の作用機構および神経細胞分化研究モデル―PC 12細胞
The PC 12 cell line: Amodel for the study of the cellular action of NGF and the neuronal differentiation.
佐野 護
1
Mamoru SANO
1
1愛知県コロニー発達障害研究所
1Institute for Developmental Research, Aichi Colony
pp.132-146
発行日 1991年2月10日
Published Date 1991/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900117
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はじめに
近年,神経科学研究の比重が高まりをみせている。中でも,培養細胞を用いた研究は,神経細胞の基礎的な性質を調べる有用性から,多くの研究に取り入れられてきた。PC 12細胞はラットの副腎より得られた褐色細胞腫由来の株細胞で,1976年GreeneとTischlerにより樹立された37)。その最も特徴的な性質は,幼若交感神経細胞と同様に,神経成長因子(NGF)に反応し,神経突起の成長を含む神経細胞様分化の起こる点である。またドーパミン,ノルアドレナリンの合成分泌能を有し,ノルアドレナリン神経細胞であると同時に,アセチルコリンを合成し,コリン系神経細胞としての性質も兼ね備えている。交感神経細胞は,発生時,その投射組織の細胞より分泌されるNGFに向かって軸索を伸ばす。
神経の連絡が完成した後は,逆行性に供給されるNGFが神経細胞の維持に不可欠な栄養因子として作用することが知られる。またNGFは中枢神経においても,コリン系神経細胞の栄養因子としての意義が注目されている。
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