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I.神経栄養因子欠損説
アルツハイマー病では,神経細胞体の脱落や樹状突起の萎縮によって,大脳皮質全般が萎縮する。ニューロンは,いったん分化した後は分裂・増殖することがなく,一部が変性脱落しても補充されることはないため,大脳皮質や皮質下のニューロンの変性脱落が痴呆を引き起こすのではないかと考えられている。そして,なぜアルツハイマー病の脳ではニューロンの変性脱落が起こるのかは現在のところわかっていないが,いくつかの仮説が出されている。
その一つがAppelの仮説1)で,彼は次のような神経栄養因子仮説を提唱した(図1)。中隔野やマイネルト基底核のコリン作動性ニューロンは,標的組織である海馬や新皮質でつくられる神経栄養因子によってその生存維持が支えられている。そしてアルツハイマー病では,海馬や新皮質での神経栄養因子の合成がうまくいかなくなることによって,中隔野やマイネルト基底核のニューロンの変性脱落が引き起こされるという。しかし,この仮説を支持する実験的根拠はない。事実,大脳皮質中でのnerve growth factor(NGF)のmRNA(NGFは中隔野やマイネルト基底核のコリン作動性ニューロンの栄養因子である)は,アルツハイマー病脳とコントロール患者脳とでそのレベルに有意な差はない9)。
Neuronal loss in cortical and subcortical regions is accompanied by accumulation of senile plaques, neurofibrillary tangles (NFT) and curly fibers in Alzheimer's disease (AD) Recent immunocytochemical studies have suggested that abnormal sprouting may be involved in the formation of senile plaques, NFT and curly fibers. To investigate why abnormal sprouting responses occur in AD brain, we have examined whether neurotrophic activity increases in AD brain extract by using cell culture of neonatal rat cerebral cortex.
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