特集 マインドフルネスを医療現場に活かす
理論を学ぶ
マインドフルネスとコンパッションの神経科学
藤野 正寛
1
1京都大学大学院教育学研究科博士後期課程
pp.22-28
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200252
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神経科学が広げた「脳とこころ」の世界
近年、欧米を中心に、マインドフルネスやコンパッション(共感)*ⅰに基づいたさまざまな心理療法が開発され、医療の現場では、患者の治療としてだけでなく医療従事者のセルフケアとしても活用されている。長い間、仏教の修行者によって行なわれてきた智慧や慈悲の実践が、医療の現場で受け入れられるようになった背景には、それらの実践からメンタルトレーニングに関わる要素を取り出して現代的に再編集したことや、その効果を示す知見が積み重ねられてきたことが挙げられる。特に、2000年代に入ってからは、それらの効果を裏付ける神経科学な知見も示されるようになり、その信頼性も高まってきている。
本稿では、始めに、メンタルトレーニングを神経科学研究の対象とするために必要不可欠な概念であった神経可塑性について概観する。次に、認知神経科学の知見を紹介しながら、マインドフルネス訓練が影響を与える認知機能について解説する。そのうえで、社会神経科学の知見を紹介しながら、コンパッション訓練が、共感疲労を低下させて思いやりや慈しみの感情を育む可能性について解説する。
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