連載 Art of Oncology[6]
患者さん・その家族と医師との対話
門田 守人
1
1地方独立行政法人堺市立病院機構
pp.367-370
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200211
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25年ほど前の話になるが、当時はまだ悪性患者さんへの病名告知はほとんど行なわれていなかった。筆者は、医学生時代に故澤潟久敬先生の医学概論の講義を受け「医学の使命は病気を治すことではなく、病人を治すことである。否、病人のみが彼らの対象ではない。生、老、病、死に悩む人間の伴侶たることこそ、医者たるものの使命であり、誇りである。医者は単なる科学者であってはならない」の教えに強く影響を受けていたので、たとえ百パーセント正確ではなくても偽りのない病名や病態を説明することは、患者さんの尊厳を守る意味で医療の本質と考えており、その実践に努めていた。
その頃、ある黄疸患者さんの奥さまと筆者との間で、病名告知について意見が完全に分かれたことがあった。そのときのやり取りが、ご夫妻が筆者宛てに書かれた文章として残っているので、奥さまの承諾を得て紹介する。なお、ご夫妻とも大学の教授として教鞭を執られていたお二人である。
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