View-point がん診療 「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」
卵巣がん・卵管がん・原発性腹膜がんについての臨床的概論
門倉 玄武
1
,
勝俣 範之
1
1日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科
pp.272-279
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200195
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1 概要と疫学
卵巣腫瘍は、上皮性、性索間質性、胚細胞腫瘍に大別され、上皮性が全体の90%を占める。卵巣・卵管・原発性腹膜がんはミュラー(Muller)管から発生し、組織型、進展形式、治療反応、予後が類似することから同一の疾患概念と考えられており、同一の治療方針が選択される。2011年の卵巣がん罹患数は9,314人で微増傾向を示しており、40歳代から増加し、50歳代前半でピークとなり、80歳代から再び増加する。また、卵巣がんによる死亡数は、2014年時点で4,840人となっており、近年横ばいである1。罹患数は子宮体がんや子宮頸がんと比較して少ないが、死亡数はこれらを上回り、婦人科がんのなかで最も予後不良である1。Ⅰ期の5年生存は80%を超えるが、Ⅲ期では40%前後、Ⅳ期は20%に満たない。
最も重要な発症リスク因子は家族歴であり、全上皮性卵巣がんの約10%は家族性とされ、BRCA1/2遺伝子変異が強く関連する。他の因子として、未経妊、長期月経期間(初潮が早く閉経が遅い)、ホルモン補充、肥満なども発症に関連する。一方で妊娠や授乳、経口避妊薬などは発症リスクを減少させる。
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