連載 がん医療スタッフの基本スキルを小説から学ぶ[2]
フランツ・カフカ『変身』—がん患者を抱える家族
金 容壱
1
1淀川キリスト教病院腫瘍内科
pp.624-631
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200140
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ある朝、グレーゴル・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。彼は鎧のように堅い背を下にして、あおむけに横たわっていた。頭を少し持ち上げると、アーチのようにふくらんだ褐色の腹が見える。腹の上には横に幾本かの筋がついていて、筋の部分はくぼんでいる。腹のふくらんでいるところにかかっている布団は今にもずり落ちそうになっていた。たくさんの足が彼の目の前に頼りなげにぴくぴく動いていた。胴体の大きさにくらべて、足はひどくか細かった。
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