特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況
【セッティングⅠ】救急外来
—オーバービュー—「救急外来」における診断エラー
國友 耕太郎
1
,
原田 拓
2
1国立病院機構熊本医療センター 総合診療科
2練馬光が丘病院 総合診療科
キーワード:
診断エラー
,
救急外来
,
認知バイアス
,
デバイアス戦略
Keyword:
診断エラー
,
救急外来
,
認知バイアス
,
デバイアス戦略
pp.552-556
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203714
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Case
大腿骨転子部骨折の背後に隠れていた消化管出血
患者:87歳、女性。施設入所中。
現病歴:転倒後に右股関節痛を訴え、体動困難となったため救急搬送された。救急外来は指導医1人・研修医2人で担当していたが、次々と患者が搬送され混雑していた。
転倒は目撃されておらず、本人は認知機能低下があり、転倒の原因ははっきりしなかった。血圧102/78mmHg、心拍数100回/分、体温36.8℃、呼吸数18回/分。血液検査はHb 10.6g/dL、MCV 93fL、BUN 26.5mg/dL、Cr 0.8mg/dL。軽度の貧血が認められたが、骨折で少し出血したのだろうと考え、次の急患対応に移った。
画像検査結果が出て「大腿骨転子部骨折」の所見が認められたため、整形外科にコンサルトし入院手続きが進んでいた。入院病棟にあがろうとしていた時に吐血しショックバイタルとなり、緊急の上部消化管内視鏡検査により「消化管出血」と診断された。過去の血液検査データを確認すると、1カ月前はHb 12.2g/dLだった。痛みの原因は大腿骨転子部骨折だと早期閉鎖してしまい、転倒の原因検索や軽度の貧血や頻脈について検討していなかった。
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