投稿 Empirical EYE
ロジックツリーを用いた診断推論カンファレンスのススメ
小栗 太一
1
1独立行政法人 労働者健康安全機構 旭労災病院 総合内科
pp.256-258
発行日 2022年2月15日
Published Date 2022/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203619
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当院で行われている症例カンファレンスには一風変わった特徴があります。プレゼンターの症例提示から考えられる鑑別診断名をホワイトボードに記載し、それらをグルーピングしたうえでツリー状に構成し直して構造化し、系統立った鑑別診断を挙げる工夫です。これは一見するとブレインストーミングにおける手法にも似ていますが、ロジックツリー1)といわれる大手コンサルティング業界で用いられている構造的に考える手法(フレームワーク)の1つです。ロジックツリーの良いところは、既存の枠にとらわれない各人の自由な切り口によって鑑別を広げられることや、確定診断に至るまでの思考過程を互いに共有したりフィードバックしたりすることで、初学者の診断能力の向上に役立つことです。
ロジックツリーの例として、「赤くて丸い甘酸っぱい食べ物は何?」というクイズに対する答えを挙げてみます。ある人は直観的に「苺」をイメージするかもしれません、あるいは「ミニトマト」を挙げる人もいるでしょう。どちらも間違っていませんが、構造的に考えられる人であれば、この時点では複数の答えの可能性があることを考慮して、「それは野菜なの? 果物なの? お菓子なの?」などとカテゴリーから答えをさらに絞り込むための追加の質問を出題者にすることになります。その人の頭のなかでは図1のように全体像を俯瞰して選択肢を瞬時に洗い出して、各々の可能性を比較検討するということを自然と行っているからです。
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