- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
CASE
患者:46歳、女性。
主訴:左顔面の痛み、左口周囲のしびれ。
現病歴:受診1カ月前から左こめかみ周囲の痛み、左上下口唇と舌左側のしびれが出現した。受診3週間前に左上顎の歯肉腫脹が出現したため歯科を受診し、齲歯治療開始となった。また詳細な時期は不明だが、症状出現前に口唇ヘルペスが出現した。受診2週間前に近医脳神経外科を受診したが、神経学的異常所見はなく、頭部MRI検査でも異常は認めなかった。特発性三叉神経痛の診断で、カルバマゼピンの内服治療が開始となるも、内服開始後よりふらつき、気分不良が出現したため、内服治療は中止となった。その後もしびれが左顔面全体に広まり、症状が持続するため精査目的に紹介となった。
既往歴:片頭痛(市販薬内服で経過観察中)。
嗜好歴:飲酒なし、喫煙20本/日×25年(現在も喫煙中)。
内服薬:定期内服薬はなし、頓服で市販のイブプロフェンを内服。
初診時現症:身長158cm、体重47kg、BMI 18.2kg/㎡。
バイタルサイン:体温36.2℃、血圧158/100mmHg、脈拍数87回/分、SpO2 99%(room air)。
身体診察:
〈胸部〉呼吸音左右差なし、肺雑音なし。心音整、心雑音なし。
〈腹部〉平坦・軟、圧痛なし。
〈四肢〉明らかな関節の腫脹や発赤なし。
〈皮膚〉皮疹なし。
神経診察:意識:JCS(Japan Coma Scale)Ⅰ-1、GCS(Glasgow Coma Scale)15(E4V5M6)。
〈脳神経〉眼球運動障害なし、瞳孔径左右差なし、対光反射問題なし。顔面神経麻痺なし。味覚異常なし。聴覚左右差なし。カーテン徴候陰性。舌偏位や萎縮なし。
〈運動〉上下肢MMT(徒手筋力テスト)5、運動障害なし。
〈感覚〉左三叉神経第3枝領域で軽度温痛覚亢進あり。
検査所見:
〈血液〉[血算]WBC 2,100/μL、RBC 357×104/μL、Hb 11.6g/dL、Ht 34.2%、MCV 95.8fL、Plt 6.5×104/μL。[生化学]TP 6.4g/dL、Alb 3.8g/dL、AST 35IU/L、ALT 18IU/L、LDH 321IU/L、ALP 155IU/L、γ-GTP 26IU/L、T-Bil 0.4mg/dL、BUN 5mg/dL、Cr 0.54mg/dL、eGFR 93.8mL/分/1.73m2、CRP 0.09mg/dL、HbA1c 5.3%。[免疫]血沈16mm、C3 65mg/dL、C4 23mg/dL、抗核抗体160倍(SPECKLED型160倍)。[尿]定性で糖・蛋白・潜血・ケトン・亜硝酸塩はすべて陰性。沈渣でWBC 1未満/HPF。
〈心臓超音波〉心収縮能71%、壁運動異常なし。有意な弁膜症なし。肺高血圧所見なし。
〈頸胸腹部造影CT〉頸部や縦隔、腋窩、腹部および骨盤に有意なリンパ節腫大なし。胸腹部に悪性腫瘍を疑う所見を認めない。
〈頭部MRI〉拡散強調像で異常信号はなく、急性期病巣を示唆する所見なし。脳幹部や小脳に異常所見はなく、三叉神経領域にも明らかな異常信号なし(図1)。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.