特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!
【コラム】
❹メンタルヘルスとバーンアウト
前野 哲博
1
1筑波大学附属病院 総合診療科
pp.1286-1287
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203422
- 有料閲覧
- 文献概要
◦医療職のバーンアウト
働き方改革が進めば、近い将来、医師の労働時間は確実に減る方向に進むだろう。しかしながら、ただ時間さえ減らせば医師のメンタルヘルスが改善する、という単純な問題ではない。時々刻々と変化する環境のなかで、高い専門性とコミュニケーション能力を要求される医療職は、非常にストレスの多い職種である。そのうえ最近では深刻化する人手不足、要求される医療サービス水準の向上など、医療職を取り巻く事情は年々厳しくなってきている。
医療職のストレス反応として代表的なものがバーンアウトであり、以下の3つの下位尺度それぞれにおける程度の問題として説明されている。すなわち、❶情緒的消耗感(emotional exhaustion:仕事を通して気配りや思いやりといった情緒的なエネルギーを注ぎ続けることで、自分が消耗した状態になり、強い疲弊感を感じる)、❷脱人格化(depersonalization:自分のさらなる情緒的エネルギーの消耗を防ぐために、相手の人格を無視した、思いやりの感じられない割り切った態度などの防衛反応をとる)、❸職務効力感(personal accomplishmentの低下:自らが消耗し、他人に優しくできなくなった結果、仕事にやりがいを感じられなくなったり自信を失ったりしてしまう)である。バーンアウトの頻度は高く、医師の約半数がバーンアウトしていたとする報告もある。また医療職のバーンアウトは、医療職自身の生産性や退職率などに影響を与えるだけでなく、医療の質やエラーとも関連することが明らかになっており、ヘルスケアシステム全体に関わる大きな問題である。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.