特集 聴診・触診×エコーで診断推論!—Point-of-Care超音波(POCUS)の底力
【各論】
頸部触診とエコー—頸部の病変を素早く、かつ、正確に判断しよう!
古川 まどか
1
1神奈川県立がんセンター頭頸部外科
キーワード:
頸部
,
触診
,
超音波
Keyword:
頸部
,
触診
,
超音波
pp.773-777
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429201524
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Case1
患者:75歳、女性。
主訴:右顎下部腫脹。
既往歴・家族歴:特記すべきことなし。
喫煙歴・飲酒歴:なし。
現病歴:3カ月ほど前に右顎下部の腫脹に気づいた。その後増大傾向があり、当院を受診した。
身体所見:口腔内・咽頭喉頭・鼻腔を、視診およびファイバースコープで観察したが、異常所見は認めなかった。
触診所見:触診にて右顎下部に腫脹を認めたが、圧痛や自発痛はなかった。顎下部の腫脹が顎下腺実質の変化か、顎下腺内の腫瘍か、顎下腺周囲のリンパ節かを触診で判断することはできなかった。さらに口腔底の双指診を施行したが、舌下小丘、顎下腺管(ワルトン管)付近に硬結や結石などは触知されなかった。
Point-of-Care超音波(POCUS):右顎下部腫脹の原因を調べるために、まずPoint-of-Care超音波検査を施行した。超音波像では、右側の顎下腺がびまん性に腫大し、正常顎下腺に低エコー部分が混在する不均質な内部エコーとなっていた(図1Ⓐ)。唾液腺腫瘍を疑う結節性病変や、顎下腺周囲のリンパ節腫脹は認めなかった。カラードプラでは、右顎下腺内の低エコー部分で血流シグナルがやや目立っていた(図1Ⓑ)。また反対側である左側の顎下腺にも、ごく軽度ではあるが右側と同様の変化を認めた。以上の所見より、IgG4関連疾患を疑い精査を進めたところ、血清IgG 1,810mg/dL(正常870〜1,700)、血清IgG4 212mg/dL(正常4.8〜105)と高値で、組織生検の結果と合わせて「IgG4関連疾患」1)と診断された。
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