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はじめに
いつもちょっとした学会よりも多数の参加者を迎える臨床消化器病研究会(肝胆膵の部:真口宏介代表世話人)の第9回研究会が2008年7月26日(土)に横浜で開催された.本研究会の膵のセッション主題(3)の今回のテーマは「Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)のすべて」で,京都府立医大人体病理学教授の柳澤昭夫先生とともに司会を勤めさせていただいた.私どもは演題を募集するにあたって,今までは非常に稀とされていたSPNの“すべて”を参加者に理解していただくべく,「主題のねらい」を以下のように募集要項に記載した.
「Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)は膵臓に発生する比較的稀な膵腫瘍である.その特徴は“若年女性と思春期の女性にみられ,無症状で転移のみられない2.5~10mm大の充実部分と嚢胞変性した部分から成る繊維性被膜に覆われた特殊な腫瘍”とされる.SPNなる名称は1959年にFrantzが“papillary tumor, benign and malignant”と記載して以来,種々変遷してきたが,その意味するところは疾患概念や組織発生がまだ十分に定まっていないことによる.本腫瘍が生物学的に良性であるのか,悪性であるのか,すべての症例が手術適応になるのか,などの問題点もある.また,SPNは比較的稀とされるが,最近のUSやCTなどの画像診断の発達,普及によりその発見頻度も増加しており,「若年女性にみられる嚢胞成分を混じた充実性腫瘍」の典型像を示さないSPNの報告例も散見される.本セッションではSPNの典型像と非典型例を提示していただき,みなさんとともにSPNの診断,治療,病理への理解を深めたいと思う.典型,非典型の症例提示をお願いしたい」
この募集に対して全国の施設から18もの多くの演題の応募いただいたが,柳澤先生の「SPNの病理」と題する基調講演があり,また時間の制約もあったため,症例提示は残念ながら8演題(表1)に絞らせていただいた.
本号ではまず「総説」として,基調講演をして頂いた柳澤先生には同演題名の「SPNの病理」を,膵腫瘍のCT,MRIなどの放射線学的画像診断法の第一人者である金沢大学放射線科の蒲田先生には「SPNの画像」をそれぞれご解説いただいた.また,島根大学消化器肝臓内科の今岡先生はわれわれとともに愛知県がんセンター中央病院時代に膵腫瘍に対しEUS-FNAを数多くの症例に実施してくれた先生であるが,彼が執筆した「Rare pancreatic neoplasms:the utility of endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration-a large single center study」なる論文がちょうど,J Gastroenterol1)に掲載されたのを機に,本号では「SPNに対する組織生検」の執筆を依頼した.そのほかには,前述の臨床消化器病研究会では8名の演者の先生方それぞれに,特長ある内容でご発表をいただいたが,学会誌への投稿予定,あるいは投稿済みの症例が3題,またわれわれの施設の症例はSPNとは確定できないと会場では判断されたので,残念ながら,それらを除いた4症例にがん・感染症センター都立駒込病院の神澤先生のご協力を得て1例を追加させていただき,計5例を「主題症例」として提示いただいた.本序説は本誌に掲載されている総説3編と症例提示5編を読む前の予備知識としてご覧いただきたくまとめたものである.気楽に読み進めていただきたい.
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