EUS-FNABによる膵癌と腫瘤形成性膵炎の鑑別診断

Differential Diagnosis of Pancreatic Mass Lesions Using EUS-FNAB

　膵癌と腫瘤形成性膵炎の鑑別診断における，内視鏡下穿刺吸引生検法（以下EUS-FNAB）の有用性について自験例の成績を中心に述べた．対象は約3年間でEUS-FNABを実施した膵管癌60例と腫瘤形成性膵炎10例である．細胞診は感度91.7％，特異度100％，組織診では感度78.4％，特異度100％，K-ras点突然変異陽性率は膵癌で73.3％，腫瘤形成性膵炎0％であった．細胞診をIIIb以上，組織診を異型上皮以上，K-ras点突然変異陽性，のいずれか満たすものを癌，いずれも満たさないものを腫瘤形成性膵炎とした判定基準を採用した時の成績は，感度95％，特異度100％，正診率95.7％ときわめて高率であった．重篤な合併症は認めなかった．EUS-FNABは膵腫瘤の鑑別診断に有用な検査法と結論づけることができる．