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【目的】MR画像上のリンパ節の形状と慢性活動性C型肝炎の活動度の関連を検索するためMR画像所見と病理組織学的活動度グレードとを対比した.【対象と方法】1か月以内にMRと肝生検が行われている50名の慢性活動性肝炎患者を,放射線科のデータベースから拾い上げ後顧的に検討した.病理組織報告書の所見から活動を軽度,中等度,高度の三群に分けた.病理結果を知らない二人の放射線科医が,独立に肝周囲腫大リンパ節(5mm以上)の有無,腫大リンパ節の数,大きさ(最大径×最小径),T2強調像の信号強度の脾臓に対する高・低を判定した.なおリンパ節腫大の存在は2人の判定医ともに1個以上の腫大ありとした時を陽性とし,その数は両者の判定数値を平均した.またMRから2か月以内に行われた肝機能検査(n=23)も組織学的グレードと対比した.【結果】リンパ節腫大は44例(88%)に認められ,肝炎活動度別では軽度64.2%(9/14),中等度96.3%(26/27),高度100%(9/9)であった(p=0.0034).一人あたりの腫大リンパ節数は軽度2.5±1.8,中等度5.6±2.2,高度8.3±3.5で(p=0.0001),また平均リンパ節サイズは,軽度151.0±104.9mm2,中等度366.8±143mm2,高度488.2±244.8mm2であった(p=0.0001).脂肪抑制*T2強調像での高信号が脾臓以上の腫大リンパ節の割合は,軽度0.17±0.25,中等度1.7±0.80,高度2.4±0.60であった(p=0.0001).一方,肝機能検査は病理組織グレードとの関連を認めなかった.なお読影者間の一致率はk検定が行われ,各項目は0.58~0.65でおおむね良好なことが示された.【結論】大多数の慢性活動性肝炎患者でMRI上リンパ節が検出された.リンパ節の数,サイズ,信号強度は慢性活動性肝炎の活動度の相関があったが,肝機能検査とは関連がなかった.【訳者解説】リンパ節腫大はリンパ腫,悪性腫瘍の転移のみならず,種々の炎症で認められる.肝にあってはPBC,PSC,C型肝炎で高率の腫大が報告される(B型肝炎では腫大は稀).さらにC型肝炎の活動度とリンパ節腫大の関連が超音波より指摘され,MRIではさらに高率で,精細かつ客観性高く評価し得ることを本報は示している.
抗ウィルス療法がある程度可能になって来た現在,その効果と活動度の評価は重要性を増しており,このリンパ節腫大の評価が自然の病勢の動向のみならず,治療前後でどの程度の精度を示し得るかの検討が必要となる.肝細胞癌のリンパ節転移が少ないこともあり,本邦では慢性肝疾患時のリンパ節にもあまり注目が向けられてないが,今後注目すべき所見と考える.
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