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肥満の基本概念
肥満は以前他疾患のリスクファクターとして認識されるに留まっていたが最近では症例の増加と共に1つの疾患として扱われるようになってきている.肥満とは,脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義されており1),診断基準としてはBMI(body mass index)=体重(kg)÷{身長(m)}2が30以上と世界保健機関(WHO)で定められている.日本人ではこの条件を満たすものは2~3%といわれ,欧米の30%と比較すると低い割合であるが,食生活やライフスタイルの欧米化に伴い年々増加傾向にある.肥満であっても特に他の疾患を持っていない症例もあるが,わが国ではBMI 25以上で高血圧,糖尿病,高脂血症などの生活習慣病の合併も多いことが知られており,早期から生活指導が行われることが望まれるため日本肥満学会ではBMI 25以上を肥満としている.肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,臨床的にその合併が予測される場合で,医学的に減量を必要とする病態を「肥満症」とし,疾患単位として取り扱うようにしている2).この肥満症の診断基準はBMI 25以上のうち,①肥満に関連し減量を要する健康障害を有するもの,②健康障害を伴いやすいハイリスク肥満.のいずれかの条件を満たしているものとしている.
肥満に伴う健康障害
肥満に伴う健康障害として,①2型糖尿病,耐糖能障害,②脂質代謝異常,③高血圧,④高尿酸血症,痛風,⑤動脈疾患(心筋梗塞,狭心症),⑥脳梗塞(脳血栓症,一過性脳虚血発作),⑦睡眠時無呼吸発作,Pickwik症候群,⑧脂肪肝,⑨整形外科的疾患(変形性関節症,腰椎症),⑩月経異常などが挙げられる1).このうち腹部超音波検査で観察可能な変化というのは,痛風腎の時に見られる腎の変化や,腹部大動脈の石灰化,脂肪肝,婦人科領域で卵巣の異常などが考えられるが,消化器領域の障害は主に脂肪肝であることが分かる.
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