特集 分子を撃つ 神経疾患治療の新しい水平線
—鼎談—分子標的薬治療の未来
田中 良哉
1
,
山村 隆
2
,
神田 隆
3
1産業医科大学医学部第1内科学講座
2国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部
3山口大学大学院医学研究科 神経内科学講座
pp.1137-1147
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200002
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はじめに
神田 今回,「分子を撃つ」という特集を組んだわけですが,ある特定の分子をターゲットにする治療というのは実はそんなに新しいことではなくて,広義には,例えばアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬も,HMG-CoA還元酵素も,みんな分子標的薬だということになります。神経系の治療薬に限定してもアセチルコリンエステラーゼの阻害薬,γセクレターゼ阻害薬などもそのカテゴリーに入ります。しかし,私たちの扱っている神経免疫疾患の薬というのは,いままではだいたい副腎皮質ステロイド薬や,免疫グロブリン大量静注療法(IVIg),あるいはⅠ型インターフェロンといった,非常に幅広い分子がまとまったシステムをターゲットとするものが主流でした。この数年でようやく……といいましても,欧米ではナタリズマブは既に10年以上の歴史がありますが,フィンゴリモドとナタリズマブという2つの分子標的薬が,日本で多発性硬化症(MS)に使えるようになったという現状です。
このように歴史が浅いということもあり,神経内科領域では分子標的薬に馴染みが薄く,特に日本ではこれからスタートするという状況です。そこで,本日は神経免疫の専門家である山村隆先生と,分子標的薬の取り扱いということではずっと先行している膠原病内科の第一人者,田中良哉先生をお招きしまして,神経疾患治療の新しいパラダイムの中で,分子標的薬というのがどういう位置につくのだろうかということをお話しいただいて,この特集のイントロにしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
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