書評
「運動障害診療マニュアル 不随意運動のみかた」―H. H. Fernandez, R. L. Rodriguez, F. M. Skidmore, M. S. Okun●原著 服部信孝●監訳 大山彦光,下 泰司,梅村 淳●訳
髙橋 良輔
1
1京都大学大学院・臨床神経学
pp.598
発行日 2014年5月1日
Published Date 2014/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101798
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Movement Disorderの和訳は運動障害(疾患)あるいは運動異常(症)で,運動が過多になり不随意運動を呈する疾患群(例:舞踏病),逆に運動が過少になる疾患群(例:パーキンソン病),そして場合によっては運動が不器用になる疾患群(例:脊髄小脳変性症)の総称である。運動障害は神経内科疾患の中でも最も謎めき興味の尽きない疾患群であり,研究が重ねられてきた。今日では,その病態生理や遺伝学的背景について数多くの知見が得られ,それらを基に新しい薬物治療法が生まれ,手術療法やリハビリテーションなど非薬物療法の進歩も著しい。しかし運動障害の診断・治療は必ずしも容易ではなく,例えば特異な不随意運動をどのように記載するかは,熟練した専門家の腕の見せどころ,といった面がある。初学者の中には苦手意識を持つ人も多いかもしれない。
このたび訳出された『運動障害診療マニュアル』は,運動障害は複雑と考えて敬遠しがちな向きの人には朗報となる実践的な手引書である。著者のうち,Hubert Fernandez氏は著名なパーキンソン病の専門家であり,国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(International MDS)ではWebsite editorとして大変魅力的なサイトを構築して,学会で表彰されたこともある。またMichael Okun氏はDBSの世界的権威で,2012年の日本神経学会で招待講演をされたことも記憶に新しい。この2名にRodriguez氏,Skidmore氏の2名の若手研究者が加わって作成された本書は,極めて斬新,かつ実践的なアプローチで運動障害の診断と治療のポイントを教えてくれる。
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