書評
「《精神科臨床エキスパート》不安障害診療のすべて」―塩入俊樹,松永寿人●編 野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文●シリーズ編集
上島 国利
1
1国際医療福祉大学・精神医学
pp.84
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101701
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1980年に発表されたDSM-Ⅲでは,neuroticという用語は残ったが,“神経症”という概念はなくなった。DSM-ⅢをまとめたSpitzerによれば理論が先行する精神分析の思想を避け,記述的な言葉だけで表現したためという。一方当時から,神経症の発症には脳内の神経化学的変化が関与するとする生物学的な考え方が台頭し,神経症という概念から離れて個々の症状をとらえて分類したほうがその治療も適切に行えるという方向へ向かった。
神経症圏の疾患は,「不安障害」「身体表現性障害」「解離性障害」にそれぞれ分類されたのである。その後約30年が経過したが,この間の変遷を1967年に医学書院から出版された単行本『神経症』(井村恒郎,他)と本書,すなわち『不安障害診療のすべて』を比較することにより,この領域の学問の進歩と現代の到達点,課題を明らかにすることができる。
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