書評
「アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 識る 診る 治す 頭痛のすべて」―慶應義塾大学医学部神経内科教授 鈴木則宏●専門編集 東京大学大学院医学系研究科神経内科学教授 辻 省次●総編集
岩田 誠
1
1東京女子医科大学
pp.293
発行日 2012年3月1日
Published Date 2012/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101150
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日常診療の中で,頭痛は誰にでも生ずる最もありふれた自覚症状の1つであるから,どのような診療科の医師であっても,自分が診ている患者が頭痛を訴える機会に出会うことがあるはずである。そのようなときに,自分は頭痛のことはよくわからないからといって,ろくに話を聞くこともせず頭痛専門医に紹介するというのも悪いことではないが,患者側からみれば,頭痛ごときでわざわざ専門医を受診するなんて,と受け取る人は少なくないだろう。一方では,頭痛を訴えて受診すると,すぐに頭のCTスキャンやMRI,MRAを撮り,何も異常はありませんといわれ,適切な解決策をみつけてくれる医者にめぐり合うまで,痛む頭を抱えて次々と医者廻りをする患者も少なくない。日常診療の場で今もなお繰り返されているこのような浪費的医療の根源にあるのは,一般の医師たちの,頭痛診療の重要性に対する認識不足と,頭痛診療に対する勉強不足であるが,そのような事態をきたしたそもそもの原因は,頭痛のメカニズムに対する科学的な教育と,頭痛の診断と治療に関する実践教育が不十分であったことである。
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