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2009年4月25日~5月2日まで米国シアトルで第61回American Academy of Neurology(AAN)のAnnual Meetingが行われた(写真1)。ここにほぼ全世界からのneurologists, neuroscientistsが集まることからinternational meetingの色合いが濃い。わが国からの参加者が少ないのは4月という年度初めに行われることと5月に日本神経学会総会が控えているからであるが,この学会の規模と内容を考えるともったいない気がする。この会には神経学を広く包括するテーマ,トピックスと,神経科学と臨床神経学の融合を考え,そこから現在のスタンダードを引き出そうとする考えが随所にみられる。
いつものように前夜祭のNeuroBowl(2チームに分かれて神経疾患の診断あてクイズ)から始まった。印象に残ったのはPresident Plenary SessionでのLouis R Caplan(Beth Israel Deaconess Medical Center)先生のEBMと臨床神経学の講演だった。「患者のためになる神経内科医とは,個々の患者へのアプローチを大切にする。すなわち詳細な病歴と神経学的所見,さらに画像検査に基づき臨床診断と鑑別診断をすることである。治療法の決定は,あらゆる治療の危険性と利点を考えることが必要で,さまざまな治療上の問題をスタッフと議論して,それを患者に説明することである」と述べ,この点に関してコンピューターテクノロジーを駆使したDr. Evidenceと神経内科医Dr. Fisher-Adamsの“2人”の間で交わされる具体的症例に関したやり取りを,ユーモアを交えながら比較し,大規模研究に基づいたEBM(普遍性)と個々の患者に基づいたアプローチ(個別性)の違いをみごとに表していた。脳卒中の専門家と思っていたCaplan先生が臨床の問題点を鋭く突いたことに感心した。余談だが,後日Caplan先生が本職の脳卒中の講演で来日されたときにAANの講演についてお話をさせていただく機会があった。後日直筆の手紙とともに講演スライドを送っていただき大変恐縮した。
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